カソクキッズ4話:大きさがないモノをどう描く!?

2017年12月31日

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大きさががないって、どういうことかな?

 第4話のテーマは「素粒子」。

 ……なのだけど、読み返してみると、あまり素粒子そのものについては描いてないんだよなぁ。

 というのも、この段階ではボクもまだ素粒子がなんなのか、ちゃんとわかっていなかったんだよ。
 それで素粒子自体にはあまりツッコまず「なんのために素粒子を調べてるのか」といったことを中心にまとめている。

 でも、ボクは連載開始前から、すっごく気になっていたことがあったんだ。

 素粒子って、どんなカタチなんだろ?

 KEKのパンフレットなどにも素粒子は描かれていて、漫画っぽくキャラ化して表現されているモノもある。
 大抵は、球形のキャラクターなんだ。

 でも……素粒子ってホントに丸いの?

 ボクの曖昧な記憶では、確かホーキング博士が言っていた「超ヒモ理論」などでは、素粒子は球じゃなくて「ヒモ」だって言ってたような気がする。

 だいたい素粒子って、大きさがないと言ってもいいくらいのモノらしいんだ。
 いわば点。
 KEKの博士たちも、そう言ってた。

 でも……。

 点は一次元だから、縦にも横にも広がりはないはずでしょ。
 フツー、大きさがないってコトは「カタチがない」ってことだよねぇ。
 球でもヒモでもなくて、そういうのは概念と言うか、そ~ゆ~ことで、本当はカタチはない?

 そう思えるんだけど……。

 でも、そうなら「大きさがないモノ=素粒子」が集まって、物質という大きさのあるものが出来ていることになる。

 んなバカな。

 ゼロがいくつ集まったってゼロのはずだろ!?
 どんだけ集まっても、大きさが生まれないじゃないか?

 はっ!?
 もしや、大きさがなくて質量だけがあるのか!?

 ……いや、そうだとしても「内部構造も大きさもない」なら、どれだけ質量が増えようが、やっぱり大きさ自体はゼロなんじゃないの?

 はっ!?
 もしや、大きさはないけど、ゼロじゃない!?

 いやいやいや、ヘンだろ、その考え!
 ゼロじゃないなら「大きさがある」ってコトだよな?

 ……「エネルギー不変の法則」が関係あるのかなぁ、とかボンヤリ思ったりする。
 大きさはないけどエネルギーはあって、そのせいで「E=mc2」でエネルギーが物質に変換されて……。

 ……う~ん、違うなぁ。
 ボクの身体の中でエネルギーが物質に変換されているとは思えんよなぁ。

 やっぱり、よく分からない……。

 ちなみに、この時点のボクは、点と呼ぶしかないくらいの「極小の空間」が素粒子だと解釈してたんだけど、ソレもオカシイらしい。

 例えば、自動車は、ボディーとかエンジンとかが集まって出来てる。
 そのエンジンも、色々な部品でできていて、その部品も鉄とかアルミとかの物質でできている。
 その鉄は、鉄原子の集まりで、原子は電子と原子核でできていて、原子核は、陽子と中性子でできている。
 こんなふうにモノを小さく分解していくと、みんな、その「内部構造」を持っているんだよな。

 でも、本当の素粒子っていうのは、これ以上は分解できない全ての「素」ってコトだから内部はないんだって。
 ウィキペディア「素粒子」の項にも「それより小さな存在がないということであり、従って内部構造を持たず空間的な大きさを持たない」と書かれていた。
 ボクが思ってた「空間」だったら内部があることになっちゃってオカシイというわけだ。

 ……う~ん、困った。
 どうにも、ピンとこない。

 これが単なる趣味や受験勉強的なデータの蓄積だけだったら、ほっとくこともできるのよ。
 別に専門の研究者になるわけじゃないのなら、ピンとこなくても「そういうもん」と割り切ってしまうこともできる。

 でも、ボクの場合は、漫画で描かなきゃならないのだ。

 大きさもカタチもないものを。

 ……………………。

 いやいやいや!
 カタチがないものは描けないよぉおおお!

 いや、それもね、KEKのパンフには球形として描かれているんだから、同じように球に描いておけばいいとは思うのよ。
 頭のいい博士たちが集まる研究機関のパンフが、そういうふうに描いてるんだから、もうそれでいいじゃん、と。

 でも、やっぱりモヤモヤするのよ。

 本当はカタチがないものを、カタチがあるかのように描写するってのは正しいの?
 分かりやすいナニカとして描く事が、逆に正しい理解から遠ざけちゃうんじゃないの?
 むしろ、誤解の元になっちゃうんじゃないの?

 そういうことが気になって仕方ないんだ。
 そういうことを気にするのが、創作ってもんだとも思うんだ。

 縦にも横にも長さがない「点」なら、大きさはゼロ。
 数学的にもゼロ×ナニカはゼロ。

 なのに、ゼロじゃない……。

 禅問答かよ!?

 なぜだぁあああああ!!
 なんで「大きさのない素粒子の集まり」のハズのボクらの身体には大きさがあるんだぁあああ!?

 

大きさががないって、どういうことかな?:その2

 ……と悩んで、結局KEKにメールした。

 そしたら、ちゃんと答えてくれた。
 さすがKEK!

素粒子の大きさの件、じつにいい質問です。
こういう質問こそサイエンスカフェでしていただければと思います。

以下、簡単ですが…

「形」とか「大きさ」とはなんでしょうか?
ほとんどの場合、我々は物体にあたった光が反射してくる時の様子から、ものの形と大きさを判断しています。
ノギスを使って大きさを測るには、接触というプロセスを使います。
イルカやコウモリは、獲物を光ではなく超音波を使って「見て」います。
物体に光や音が跳ね返る時の挙動、それが我々が考える「ものの大きさやかたち」です。

 なるほど~~~っ

素粒子も同様に光や他の粒子と反応する際に「大きさ」があります。
これを「反応断面積」といいます。
「反応断面積」の大きな粒子は離れていても力が働くし、小さな粒子(ニュートリノなど)は他の粒子とほとんど反応しません。

 え、大きさあるんですか!?

一方で物理学で素粒子を数式で考える時には、ある「モデル化」をします。
標準理論では素粒子を「大きさを持たない点」としてモデル化します。
ヒモ理論では素粒子を「長さを持つなにか」としてモデル化します。
「大きさ」や「長さ」をモデル化すると、数学的な自由度が生まれます。
その自由度が実験で確認できるかどうかが、モデル化の正しさをみるための一つの指標となります。

 モデル化ってのは、考え方というか、概念というか、とにかく「そ~ゆ~もんだとして考えてみる」ってことだよな。

「素粒子は大きさを持たない」という言葉は、物理屋の言葉で言い換えると「大きさを持つ素粒子をモデル化すると、実験結果をうまく説明できなくなる(から、大きさを持たない点というモデル化が現状ではいちばん正確らしい)」となります。

 ????
 大きさがあるっていうのに、なんで「ない」というモデル化をしちゃうの?

ヒモ理論がもたらす数学的自由度が実験で確かめられるかどうかが、現代物理学の最大の焦点といってもいいかと思います。

 ……というわけなんだけど……

 ……う~ん、面白い回答を送ってくれたけど、ど~も、よく分からない。
 大きさのない素粒子から大きさのあるモノが成り立っているってのが、ど~もピンとこない。

 ボクはたぶん、何か初歩的なコトを勘違いしてるんだと思うんだよな。
 そのちょっとしたツボが分かれば、閃くように理解できていくような気がする。

 それは、すごく気持ちがいい瞬間だろうと思うから、博士たちにはあまり聞かないの。自分で閃きたいから。
(どうしても描かなきゃならなくなったら、聞くしかないんだけどね)

 でもボクは、こういう「素朴な疑問」ってのを、割と大事に考えている。

 コドモが迷いに陥るときって、そ~ゆ~初歩的な勘違いからだと思うんだよね。
 指導者が考えてもみなかったよ~な、1+1が2であることを忘れたようなトンデモない低レベルの勘違い。
 後で考えたら「そんな間違いあり得ない」と本人も思うくらいの。

 でも、あまりにも初歩的な部分だからこそ、自分では勘違いに気づけなかったりする。
 そして勘違いに陥ったまま進んでいって、いつしか修正できない大きなズレになってしまい、それで勉強が嫌いになるんだよな~。
 少なくともボクはそういう感じで、理数系が苦手になったような気がする。

 だからボクは、そこを気にする。
 勘違いしてるかもしれない誰かのために、初歩の初歩の部分を繰り返し取り上げて、色んな解釈で描写してみたりする。

 だってコレ、漫画だもん。

 勘違いしない人、こういうことに興味を持ってちゃんと学べる人は、漫画にしなくても学ぶんだよ。
 KEKのトピックとか、科学誌とか、そういうのに興味を持つような人なら、漫画で紹介しなくてもいいはずなんだ。

 それを漫画にするということは「わからない人」「漫画にしないと興味を持てない人」向けのはずなんだ。
 実際の読者には「わかってる人」が多いとしても、ボクは常にわかってない人のほうを気にし続けたい。
 そうでないと、漫画にするっていうプロジェクト自体の意義が揺らいじゃうと思うもん。

 ギャグ漫画だからテキトーでいいや、じゃない。
 笑うトコでは本気でウケを取りに行くけど、同じくらいに正しい解釈、理解っていうのも気にしなきゃいけないと思うんだ。

 今までが球だから、今度も球に描いておけばいい、じゃないと思うんだ。
 結局はそうするしかないにしても、それがどういうことか、しっかり自分で考えた上でないと。
 モヤモヤするなら、そのモヤモヤも作品中に盛り込んで、読者にも考えさせないと。

 そういうことが大事だって思ってるの。
 そう描いてこそ、本当の興味を引き出せるんだと思うの。

 ボクは元々が広告漫画家だから、漫画だけ読んで終わってもらっては困るというのを、ずっとやっているからね。

 広告漫画は広告だから。
 漫画を読んだことが商品やサービスを買うといった「行動」につながらなければ、どんなに面白いものを描いても負けなんだ。

 だから、科学漫画も同じに考える。
 漫画を読んだことがキッカケで科学に興味を持ち、自分から学びたくなるように導くものでないとダメだと思う。

 そうでないと、科学の裾野は広がらない。
 わかっている人だけがトンガってるだけで、意義や価値を理解できる人が増えていかない。

 それじゃあ、ダメなんだ。
 ボクが自分の作品だと覚悟を決めて踏み込んだのは、そういう理念や使命も感じてのことなんだ。
 漫画描いて、ウケ取って、ギャラもらえばOKじゃないんだ。

 頭のいい人にはできないやり方で科学の裾野を広げるっていう、大きな夢と使命が漫画にはあるのよ。

 だからボクは考え続ける。

 8年の連載をやった今でも、素粒子に大きさがないのに、それで出来てる物質には大きさがある謎は、本当には理解できてないと思う。
 漫画の中でも、結局毎回、素粒子は球体に描くしかなかった。

 それでも、考え続けることはやめていない。

 何か、他の方法はないか。
 もっとピンとくる表現はないのか。

 ず~っと考え続けている。
 そうやって、自分自身も納得できる答えを探しているんだ。

 ちなみにね、どんだけ考えても、答えは永遠に出ないんじゃないかと思っている。

 最初にチラっと書いたけど、超ひも理論などでは「素粒子はひも」っていう考え方をするのよ。球でさえない!

 この超ひも理論は、今では多くの研究者が認めている理論ではあるのだけど、未だに本当に正しいかどうかは確定していない。
 確定するには、その証拠である超対称性粒子っていう未発見の素粒子を見つけなきゃならない。

 でも、いつかはソレも見つかって、素粒子がひもとして描かれる時代が来るかもしれない。
 そして、その後も研究が進むたびに新たな発見があって、解釈が根本からひっくり返ったりすることだって、あり得る。

 科学……いや学問って、学べば学ぶほど謎が増えていくのよ。

 1つわかると、その数倍の疑問が浮かぶようになる感じ。
 学ぶことで、さらなる謎に気づけるようになっていくんだ。

 だから、きっと永遠に終わりはないんだ。

 それでも考え続ける。学び続ける。
 何かを思いついても、そこでゴールじゃない。
 ゴールだと思った場所の先にも、ず~~っと、もっと先のゴールがあり続けてるんだ。
 どこまで行ってもチャレンジャーなんだ。

 そういう考え方、取り組み方っていうのが、ボクがKEKで学んだ最大のことだと思う。
 それは、科学知識の1つ1つより、ずっと大きいと思ってる。

 それに……

 KEKからは知らないままでいいって言われるんだもん。
 むしろ、そのほうがいいって。
こっちの人になってはいけない」って。

 だからバカはバカの力を最大限に生かす方向でやってるんだい(笑)。

 


※補足
 今でもボクは、この「素粒子に大きさがないのに、それで出来ているモノには大きさがある問題」がスッキリ理解できているとは言い難いけど、当時より多少は前に進んでると思う。正しい方向に進んでいるかどうかは自信ないけど。

 大きさはないけど、エネルギーはあるんだよね。
 で、第1話で学んだように「エネルギーは仕事にもカタチにもなる」から、大きさのない素粒子から大きさが生まれてもオカしくない、と。
 そんなふうに考えている。
 いや、この解釈でOKってことでもないんだろうけど、今のところはそういう理解のしかたをしてるの。

 ていうか、ボクらが大きさだと思っているもの自体が、実はエネルギーでしかない、という感じかなぁ。
 ボクらが生きているスケールでは、物質=カタチと認識しているだけで、もっとミクロな、あるいはマクロなスケールで捉えたら、物質の概念自体も相対的になっちゃうんじゃないかと。

 素粒子などの超ミクロなスケールなら、我々の体もミクロコスモス……宇宙と同じ。
 逆に宇宙並みに大きな生命がいたとしたら、銀河系でさえ細胞の1つにもならないかもしれない。

 まぁ、ここまでくるとSFになっちゃうんだけど、それでもね、そういうふうに想像していくと、ちょっとだけ素粒子の謎もわかってくる気がするんだ。

 で……。

 そういうアイデアは、自分の作品に取り込んでいる。

 ボクが電子書籍で連載している『時空戦士イバライガー/小説版』では、カソクキッズの連載を通じて学んだ知識や、そこから派生した様々なアイデアを盛り込んで「子供向け特撮ヒーローものを、できるだけ科学的っぽく描く」というのに挑戦している。
 素粒子、加速器、量子論、宇宙論、物性物理、バイオ、ナノテクなどなど、カソクキッズだけでなく色々な科学漫画をたくさん描かせてもらって学んだことを、片っぱしから取り込んで書いているの。

 まぁ、本当に科学的に正しくは描写できないんだけど、それでもね、学び続ける、考え続けるを学んだおかげで、楽しんで書けるんだ。

 カソクキッズを描いたことは、ボクにものすごく大きなものをくれたんだと思ってるよ。

 

 


※カソクキッズ本編は「KEK:カソクキッズ特設サイト」でフツーにお読みいただけます!
でも電子書籍版の単行本は絵の修正もちょっとしてるし、たくさんのおまけマンガやイラスト、各章ごとの描き下ろしエピローグ、特別コラムなどを山盛りにした「完全版」になってるので、できればソッチをお読みいただけると幸いです……(笑)

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『カソクキッズ』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。KEKのサイトでも無料で読めますが、電子書籍版にはオマケ漫画、追加コラム、イラスト、さらに本編作画も一部バージョンアップさせた「完全版」になっているのでオススメですよ~~(笑)。