面倒くさい営業活動を他の人に任せてしまっても大丈夫か?

2017年12月30日

 うん。セールスそのものは、広告会社に任せたって構わないと思うよ。

 こちとら漫画家で、営業のプロじゃない。
 自力営業で一般企業から仕事を獲ってくるなんてコトは、そう簡単にできるもんじゃない。

 ただ、そうだからって漫画を描く部分だけやっていればいいかというと、そういうモンでもないと思う。

 仕事を見つける、客を捕まえるって部分は、営業のプロに任せたほうが効率的だろうけど、その後の商談や打ちあわせとなると……

 ……ボクはおっかなくて、任せきりにしておけないなぁ。

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漫画って、フツーの営業が扱うには厄介なんだよね

 広告会社に商談を任せるってコトは「漫画の仕事なのに漫画を全然知らない人に任せる」ってコトにもなるんだ。

 だからトンチンカンなコトになりがちなのよ。
 広告に関しては万全でも、漫画の部分が抜けすぎていて「そんなんじゃ漫画じゃなくてフツーの広告にしとけばよかったじゃん!」ってコトになっちゃうのよ。

 そもそも漫画って、そんなに売りやすいモノでもないんだよ。

「ちゃんとした漫画」を作ろうとすれば、発注側にも漫画への理解を求めざるを得ない。
 ハンバーグ食べたいだけの客に、いちいち調理手順から教えなきゃいけないようなトコがある。

 本格的に学んでもらう必要はないけど「漫画は専門職で素人が口出しできるようなモンじゃない」と納得できる程度にはわかっていてもらえないと、トラブりやすいんだ。出版社で描く場合だって、漫画のコトを全然知らない担当が付いてトンチンカンなコトばっかり言い出したら不安でしょ。

 だからボクは、広告会社と付きあうときはいつも、営業の人たちが漫画をキチンと扱えるように詳しく教えてあげようとするんだけど、広告会社にしてみれば、そんな面倒くさい勉強してまでやる気はないんだよね。

 熱心に語れば語るほど、かえって煩わしく思われてしまう。

 そこまで聞いてない。そこまでやりたくない。
 たぶんソレが本音だったハズだ。

 企業ってのは利益を上げることが目的だから、その目的を達成できれば漫画じゃなくてもいいのよ。
 漫画もやれたほうがいいけれど、だからって漫画を積極的に売りたいわけでもないんだ。

 漫画は人目を引くし面白い制作事例にもなるんだけど、メインの商品は、あくまでも「漫画じゃない広告」のほうなのよ。
 本当はソッチを売りたいの。

 たまに入ってくる広告漫画はノイズみたいなモノ。
 そう思う人のほうがずっと多いのよ。

 だから漫画について本気で覚えようと思わない。
 いつまでも素人のまま。

 で、そういう人に任せていると、トンデモないコトを打ち合わせで決めてきて、押し付けられたりする。
 何も知らないド素人がプロデューサーなんだから、こんな恐ろしいことはないのよ。

自分と作品を守るために出しゃばるしかなかった

 それでボクは、できるだけ打ち合わせにも参加させてもらうようになった。

 毎回じゃないけど、広告会社側がOKなときは、先方の担当者に同行して自分で客先に出向く。
 そして客としっかり話し合う。
 漫画家の魂をわかってもらい、それから仕事に取りかかる。

 できるだけ、そうするようにしたんだ。

 これはつまり、本来は自分の仕事じゃないプロデューサーの領域まで背負い込むってことになる。
 しかも、その分のギャラがもらえるわけじゃないんだから、ある意味でタダ働きを買って出ているようなモノだ。

 けど、そうしなかったら、もっとキツイのよ。
 自分が請け負った範囲はココからだから、その手前は知らないよって言ってると、自分の出番になるときにはメチャクチャになってるのよ。

 だから自分自身と作品を守るためには、プロデュース段階から首をツッコむしかなかったんだ。

 面倒くさいけど、そうしたほうが仕事がスムーズなのよ。
 面倒でも、それをやっておくのと素人任せにしておくのとでは、まるで違うの。

 もちろん、いつも出しゃばるわけじゃない。
 ボクの同席を歓迎してくれる人もいれば、嫌う人もいるからね。

 ある広告漫画の打ち合わせに同席したとき、代理店の営業がトンチンカンなコトばかり言うので黙っていられなくなり「○○はこうですよね」「で××はこう考えないと危ないですよね」と横ヤリ入れて、その後の商談を仕切っちゃったコトがある。

 結局仕事は上手くいって大好評だったんだけど、営業担当にしてみれば面子丸ツブレにされたようなモンだから嫌われちゃって、二度と連絡してこなかった。
 同じ会社の別の人たちとは仲良くやってたけど、その人とはそれっきり。

 ま、そういうこともあるの。
 だって仕方ないじゃん。最初の商談のまま進んでいたらトンデモないモノになってたのは確実なんだから。
 そういう仕事を請け負って地獄を見るのボクなんだから、黙ってられないのよ。

 同席を嫌うタイプの人って、何も知らないくせに専門家ぶって喋るんだよね。
 お客も知らないから、ボクがいなけりゃそれで通るんだけど、ボクがいても「自分が自分が」で喋り続けるから、こっちもね「おいおい、それ違うだろ」ってツッコまざるを得ないのよ。そのくせ言われると、へそを曲げるんだ。

 こういうタイプって自分が優秀だと思ってるから、オカしなコトになってても自説を曲げないのよね。
 自分が引っかき回してるのに、漫画家のせいにしたりさ。

 こっちを格下だと思いがちなんだよね。
 いや、上でも下でもないはずなんだけど。

 なので、このタイプには嫌われても構わないの。
 そういう人を立ててやって仕事もらっても、厄介事だらけで採算合わないことが多いから。

 一方、同席を喜んでくれる人とは、その後も上手くいく。

 同席歓迎タイプは、自分が専門家だとは思っていない。
 自分が得意な部分には自負を持っているけれど、何でも知ってるなどと思い上がったりはしない。
 だから必要に応じて「有識者」を用意する。
 モチはモチ屋を心得ているわけ。

 そういう人は、漫画の案件を手掛けるごとに知識もつけていく。
 漫画家になっちゃうほど詳しく人には出会ったことないけど、それでも漫画の案件で注意しなきゃならないこと、ボクが何を嫌がり何をやりたがるかなどを覚えて、ボクが同席しなくても、それなりに商談できるようになっていく。

 そして、そうなっても、こちらを低く見ない。
 むしろ「さすがはモチ屋」と当てにしてくれるの。

本当に獲るべきものは、仕事じゃなくて「客」

 そういうわけで、客との打ち合わせに出しゃばるのは面倒くさいんだけど、そうすることで、色んなことを測れるっていうのは大きいんだ。

 仕事をしっかりやるためだけじゃなくて、誰が「自分の客」なのかを見定めることもできるからね。

 仕事はね、そのときだけなんだ。

 運良く長期連載でも任されたのなら別だけど、そういうことは滅多にない。
 広告の仕事でやってる限り、描いた作品が単行本になって印税を稼げるわけでもない。
 そのときだけで終わっちゃう。

 だから「仕事」を追いかけていると、いつまでも自転車操業になっちゃうんだ。
 苦労の割に報われないって感じが、ずっと続くんだよね。

 しかも、そういう状態は弱みになる。

 自分で客を押さえてないから、どうしても立場が弱くなる。
 仕事を回してくれる人に逆らいにくくなる。
 クリエイターじゃなくてタイコモチで食ってるような状態に陥りがちなのよ。

 本当に獲るべきものは、仕事じゃなくて「客」なんだ。

 つまり、人。
 自分を認めてくれる人。
 適正に評価してくれる人。

 いわば、ファンを持つってことだ。

 長く仕事をしていくためには、そういう「客」を何人持つことができるかが大事なんだよ。
 1つ1つの仕事じゃなくて、その仕事の出所のほうを押さえるんだ。

 そうするために、まずは仕事をしっかりやる。

 知りあった人たちの仕事をしっかりやれば、信じて任せてくれるようになる。
 最初は厄介な相手でも、安心して付きあえる相手に変わっていくこともある。

 その人が転職したり独立したりしても大丈夫。

 ボクは、誰かが転職した先に行ってもボクにオーダーし続けてもらった経験が何度もある。
 全然広告と関係ない業種に移った場合も、他の誰かが「漫画で広報したい」などと言ってるのを耳にすると、ボクを紹介してくれたりする。

 最初は1つの仕事からなんだけど、徐々に、仕事単位ではなく客単位でやっていけるように変えていくの。

 それが一定数に達すれば、厄介事のほとんどは消える。
 苦労がなくなるわけじゃないけど、少なくとも嫌なコトは激減するはずだよ。

 出会ったみんながそうなるわけじゃないから、こうした変化は、背が伸びるのよりも実感できないくらいのペースなのだけど、それでも今のボクには、ボクを信じて制作に打ち込ませてくれる取引先がいくつもある。

 だから今もボクは仕事を続けていられるんだ。
 そうじゃなかったら、ボクみたいなヘソ曲がりで頑固なヤツが、何十年もやれるわけがないでしょ。

色々覚えて、今は自力営業もそれなりに

 漫画の仕事にプロデュース段階から関わっていくようにして以来、ボクは自力営業で直接一般企業から引き受けるというのも、積極的にアピールするようになった。

 一応ね、WEBサイト掲げて営業してるからね。
 そのサイト経由で一般企業からオーダーが舞い込んでくることも度々あるのよ。

 っていうか、付き合いのある広告会社のほとんども、そうやってサイト経由で知りあったんだ。
 こっちからメールなどで売り込んだ相手や、クチコミなどでつながったお客もいるけど、大半はサイト経由なの。

 最初の頃は、お客じゃなくて仕事しか見てなかったから、1つの仕事はそのときだけで、後につながることはあまりなかった。
 ボクのほうも直接のオーダーって、何だか面倒くさい気がして、あんまり本腰入れてなかったんだよね。

 けれど、広告会社の仕事でも客と向きあって打ちあわせしてるんだから、広告会社を通さない仕事だってやれちゃうのよ。

 漫画広告は漫画だけで完成するわけじゃなく、広告の部分もやらなきゃフィニッシュしないのだけど、ボクは広告業者でもあるからソコもやれちゃうわけで、自分で自分の客を押さえていくこともできるんだよね。

 まぁ実際には、そんなに簡単ではなくて、作品を作ることよりお客を管理する仕事のほうに、労力の多くを割かれてしまったりする。
 むしろ、漫画以外の部分のほうが大事なくらい。
 実働時間の7割くらいを漫画以外のコトのために使って、ようやく漫画を描ける。
 
そんな感じになってしまう。

 広告会社相手なら、そこまでじゃなくて済む。
 漫画以外のコトもやらなきゃいけないのは同じだけど、一般企業相手とは逆で漫画のほうを7割にできる。

 それでもボクは、自力営業も続けている。

 良質な広告会社とは懇意でいたいけど「広告会社だけに依存していては生まれない仕事」っていうのもあるからなんだ。

 広告会社からオーダーが来るときってのは、漫画の案件をやると決まってからなのよ。
 しかも漫画じゃないアイデアのほうが優先されがち。

 どれだけ漫画の案件を経験しても漫画家ではないから、最初から漫画でやろうと思っていない限り漫画向きの案件であってもソレと気付けないんだよね。

 でもボクが直接企業と接していると、全然漫画と関係ない案件であっても「コレ、漫画にしたら面白い展開になるんじゃないかな?」って気付いて、提案できるの。

 これが大きいんだ。

 可能性を切り開くような案件って、そういうトコから生まれてくるから。

漫画家には漫画家にしかできない営業テクが

 結果的にボクの代表作になった連載漫画『カソクキッズ』は、まさにその典型。

 最初は漫画じゃなくて、WEBサイトのリニューアルの案件だったんだから。
 サイトのガイド役として漫画的なキャラたちは作ったけれど、そのリニューアルだけで終わるはずだった。
 漫画化の予定なんか全然なかった。

 でも、キャラを考えたときに漫画化の構想まで話したの。
 こんなストーリーで、こんな展開でと、色々アツく、漫画家として語った。
 実際、そこまで考えないとキャラ作れなかったし。

 その「ボクの想い」が伝わって、サイトの仕事から数ヶ月後に本当に漫画にするプロジェクトが立ち上がり、さらに本番ではボク自身が、単なる請負仕事じゃなく、本気でカソクキッズを描きたくてたまらなくなり、元々の仕様や予算では実現不可能なトコまで自腹で踏み込んじゃって、長期連載になっていったんだ。

 そして、その成果を見た他所からも同様の漫画を頼まれるようになったりして、未来が大きく開けた。

 カソクキッズそのものではランニングコスト分くらいで稼いではいないのだけど、そういう作品を描けたことが、別なカタチで収益につながり、さらには新しい可能性まで生み出した。

 自分で営業からやっていなかったら、こういうことは起こらなかっただろう。

 広告漫画であっても、広告としか見ない人と漫画としての可能性まで考える人では、全然違うんだよ。

 漫画家には、漫画家にしかできない営業方法がある。
 営業そのものに長けているわけじゃないから、機会はとても少ない。
 それでも続けていると、思いもよらない何かに届いたりする。
 ビジネスでやってるだけでは届かない何かに。

 そして、そういう案件こそ、ボクが熱望していたモノなんだ。

 広告会社経由でも、そうしたチャンスに巡り合うことはあると思うけど、ボクはそれを待っているだけじゃなくて、自分で飛び込んで加速させる道を選んだ。

 今のボクの場合、漫画の仕事だけに絞ると、直接依頼を受けているモノと、広告会社経由でやっているモノが半々というところだ。
 漫画以外の広告仕事(イラスト制作なども含む)やWEB制作になると、9割が直接のほう。

 広告会社経由のモノも、長年付きあってコチラの腕をわかってくれている会社が多く、勝手に打ち合わせを進めたりはせずに、ボクの意見や助言を聞いてくれる取引先が多い。そうでない新規の取引のときも、ボクがそれなりのキャリアを持っていることを知った上でオーダーしてくれることが多いから、大抵はボクの意見に耳を傾けてくれる。

 色々足掻いた揚げ句、今はそういう感じになった。

 長い時間をかけて、ようやく、それなりに納得できる状態に近付いてきたって感じだね。

自力を伸ばしつつ他力も借りたい

 ただし、これでも万全というわけじゃない。

 先に書いた通り、営業から自分でやっていると余計なアレコレに常に振り回されるから、実際に制作に打ち込めるのは勤務時間の3割くらいにしかならない。

 しかも色々なコトを抱え込んじゃうから、キャパも拡大できない。
 スタッフ増えているのに、結局は自分一人の時と大して変わらない量しかこなせなかったりする。
 食い扶持が増えてるのに収入は増えてないようなモンだから、むしろ前よりキツくなっていたりもしてる。
 モノゴト都合よくはいかないモンだよなぁ。

 それでもボクは、できるだけ今の形でやっていきたい。

 都合よくはいかないけど、ちょっとずつ力はつけているのよ。

 だから、今後も懇意な広告会社と仲良くしつつ自力営業も続けて「客」を掴み続けていたいんだ。
 今がキツくても、それは将来の財産になるから。

 本当にね、死ぬほどキツかった時期があってさ、そのときのことを思うと、今やってるコトがピンチのときにどれだけの力になるのかがわかるのよ。
 普段は厄介で面倒で……と思っていても、ピンチになると「ああ、そうしていてよかった」になるの。

 たくさんのお客から、ホンのちょっとずつの「元気玉」をもらった経験があるんでね、サバイバルするには客ほど頼りになるものはないって思ってるの。
 だからボクは、誰かに営業を任せきりにはしない。

 一人で何でもやれるとは思わないけど、自分でもやれる部分は自分でもやって、自力を伸ばしつつ他力も借りるって感じがいいと思ってるの。

 


※このブログに掲載されているほとんどのことは、電子書籍の拙著『広告まんが道の歩き方』シリーズにまとめてありますので、ご興味がありましたら是非お読みいただけたら嬉しいです。他にもヒーロー小説とか科学漫画とか色々ありますし(笑)。